小包中納言物語

2Eギフテッドな蟲愛づる娘のホームエデュケーション

『ケーキの切れない非行少年たち』が暴露したもの

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まず最初に断っておくが、本書は、帯にあるように「すべてがゆがんで見えている」子どもたちの驚くべき実像を描くことが目的ではない。また、特定の認知機能トレーニングを全編にわたって詳しく解説した本でもない。あるいは、「認知の歪みを抱えた子は犯罪者になる」などと短絡的な主張を煽動するものでは断じてない。 

ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)

ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)

 

本書は、医療少年院にいる非行少年(少女)のなかに、認知機能の困難や軽度の知的障害を抱えているにもかかわらず、これまで「不真面目だ」「やる気がない」「手がかかるどうしようもない子だ」などと不当に決めつけられてきた子どもたちが大勢いることを告発した本である。

 

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「3歳未満で保育園に入った子どもに不登校児の出現率がきわめて低いことを示したデータ」とは、いかなる根拠に基づくのか?

先日は朝方から「保育園」と「不登校」という一見すると関係なさそうなワードがセットになって、私のタイムラインを賑わしておりました。中には感情的になって何やらしきりに虚空に向かってリプを飛ばしているフォロワーさんもおり、何があったのかなと思いつつも新しく買ったハイレゾ対応のイヤホンで聖子ちゃんの歌声を堪能していると、火元と思しきツイートが流れてきました。


なるほど、「保育園に預けて仕事に行くなんて子どもが可哀想」などという時代錯誤の批判や偏見に晒されながらも、信念を貫こうとするワーママさんたちの悲痛な決意が伝わってきます。

と同時に、率直に言って「こりゃ燃えるだろうよ」とも思いました。いま現に不登校の真っ只中にいる中高生や、不登校経験のある学生社会人、不登校の子をもつ親御さんたちにしてみたら、まるで自分たちを蔑んでいるツイートであるかのように受け取れてしまうからです。

とはいえ、我が家の娘にしてみれば「できることなら不登校になんかなりたくなかった」と日頃から申しておりますし、私個人としても元ツイ主さんの考えを殊更に取り立てて薪をくべるようなこともしたくないという気持ちでした。むしろ保育園に通わせるとか、そんなんで不登校にならなくて済むならぶっちゃけそっちのほうが楽だし、うちみたいにそもそもママがASDでテンパっているような家庭では、おいそれと #不登校は不幸じゃない などというハッシュタグを使う気にはなれないものです。

というより、「そもそも〈3歳未満で保育園に入った子どもに,不登校児の出現率がきわめて低いことを示したデータ〉とは、いかなる根拠に基づくのか?」「添付画像みたけど、サンプル数が異常に少ないし、(佐野ら,1984より)って昭和59年の論文だけど、前の前の時代の元号だけど古すぎない?」という、そっちの方の興味が湧いてきてしまいました。嗅覚というやつです。

出典を調べてみると、どうやら松田文子・高橋超『生きる力が育つ生徒指導と進路指導』(北大路書房,2002年)に引用されている、佐野勝徳, et al., 「生育歴からみた登校拒否の発生要因とその予防法について」,『児童青年精神医学とその近接領域』25, 285-295 (1984) だと言うことが分かり、早速近所の大学図書館で探し当てたところ、期待以上の可燃性でしたので以下に当該論文の概要をかいつまんでシェアさせて頂きたいと思います。

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参院選に向けて #不登校新聞 が各党に不登校についてアンケートしていた。

futoko.publishers.fm


明日の投票日に向けて非常に参考になります。

【Q1.不登校および不登校傾向に対する現状認識は?】

【Q2.不登校に今もっとも必要な具体的な取り組みは?】

どちらも不登校当事者家庭には死活問題です。はっきり言って改憲だとか消費税なんかより重大な争点です。以下、不登校生徒の保護者として、各党の回答にツッコミを入れていこうと思います。

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私がTwitterを使う時のガイドラインを策定した

一口にTwitterといっても、その使い方にはいくつもの方法がある。

 

ツイート、リプライ・スレッド・ツリー、メンション、リツイート、引用リツイート、画像・動画、ダイレクトメール、いいね、フォロー、リスト追加、ミュート、ブロック、リムーブ、スルー、フォローバック、FF外から失礼します、延々とTLを縦スクロール、この広告に興味がない、スクショを晒す、通報、燃料投下、バカ発見器、ポリコレ棒で叩く、など実に多様な機能が用意されている。

 

なかでも我が国で最もよく用いられている機能が、ヘイトスピーチやデマ、フェイクニュースの拡散だろう。

 

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なぜ数学の定期試験なのに「法則の名称」を出題するのか?──観点別評価の帰結

問 ( a (x + y) = ax + by ) であるとき、この法則を何というか。
解 分配法則

 数学的な思考能力とその到達度を評価するはずの「数学の」定期試験なのに、「法則の名称」を答えさせる問題が出されるというのは、かなり困った事態なのではないかと思うのであります。しかも漢字で書かないと減点、さらに授業で教わったとおりの名称でない「分配則」「カッコをバラしても同じの法則」などの解答も減点という縛りまでついてくるとなると、もはや漢字検定なのか数学検定なのか判別不能です。

このように「問題」とその「正解」という「一問一答」をマッチングさせる百人一首大会のような出題は、計算問題でも証明問題でもなければ、空間認識とも数量概念とも全く無関係であり、何をどう評価しようとしているのかさっぱり意味が分からない試験だったわけで、小学校から大学の学部まで長いこと数学の試験を受けて来た身としても完全に初見なのでありました。

ところが、上記のツイートに対して多く寄せられた驚きの声に紛れて、「え、普通だと思ってました」というリプが、若い世代を中心に複数あったのも事実です。また、中学生・高校生の子を持つ親御さんからの報告によれば、傾向として特に地方の公立中に多く見られるようでもあります。

 

いったい、いつからどうしてこんなことになってしまったんでしょうか。*1

 

*1:こちらの記事は下記のまとめに収載した皆様との意見交換を基に執筆させて頂きました。この場を借りて御礼申し上げます:公立中学校の数学の中間テストで「法則の名前」を答えさせる問題が出題される - Togetter

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