『ケーキの切れない非行少年たち』が暴露したもの

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まず最初に断っておくが、本書は、帯にあるように「すべてがゆがんで見えている」子どもたちの驚くべき実像を描くことが目的ではない。また、特定の認知機能トレーニングを全編にわたって詳しく解説した本でもない。あるいは、「認知の歪みを抱えた子は犯罪者になる」などと短絡的な主張を煽動するものでは断じてない。 

ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)

ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)

 

本書は、医療少年院にいる非行少年(少女)のなかに、認知機能の困難や軽度の知的障害を抱えているにもかかわらず、これまで「不真面目だ」「やる気がない」「手がかかるどうしようもない子だ」などと不当に決めつけられてきた子どもたちが大勢いることを告発した本である。

 

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なぜ数学の定期試験なのに「法則の名称」を出題するのか?──観点別評価の帰結

問 ( a (x + y) = ax + by ) であるとき、この法則を何というか。
解 分配法則

 数学的な思考能力とその到達度を評価するはずの「数学の」定期試験なのに、「法則の名称」を答えさせる問題が出されるというのは、かなり困った事態なのではないかと思うのであります。しかも漢字で書かないと減点、さらに授業で教わったとおりの名称でない「分配則」「カッコをバラしても同じの法則」などの解答も減点という縛りまでついてくるとなると、もはや漢字検定なのか数学検定なのか判別不能です。

このように「問題」とその「正解」という「一問一答」をマッチングさせる百人一首大会のような出題は、計算問題でも証明問題でもなければ、空間認識とも数量概念とも全く無関係であり、何をどう評価しようとしているのかさっぱり意味が分からない試験だったわけで、小学校から大学の学部まで長いこと数学の試験を受けて来た身としても完全に初見なのでありました。

ところが、上記のツイートに対して多く寄せられた驚きの声に紛れて、「え、普通だと思ってました」というリプが、若い世代を中心に複数あったのも事実です。また、中学生・高校生の子を持つ親御さんからの報告によれば、傾向として特に地方の公立中に多く見られるようでもあります。

 

いったい、いつからどうしてこんなことになってしまったんでしょうか。*1

 

*1:こちらの記事は下記のまとめに収載した皆様との意見交換を基に執筆させて頂きました。この場を借りて御礼申し上げます:公立中学校の数学の中間テストで「法則の名前」を答えさせる問題が出題される - Togetter

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「学校が死ぬほどつらい子は、いらっしゃい」のニュースに心温まるだけでよいのか?

ホームエデュケーションは、果たして本当に「逃げてもいい」の出口戦略たりうるのか?

前回の記事では、「外野から"逃げてもいい"と呼びかけるのはいいが、その先の責任は誰が取るのか」という問いを立て、もはや国レベルでは不登校は就学義務違反や問題行動とはみなされないことを、学校教育基法、教育機会確保法の制定、過去の判例、および文科省の通知を根拠に論じました。その上で、死ぬほど学校がつらいなら「ホームエデュケーション」として自宅その他で勉強するのも一つの選択肢であり、図書館を拠点とする「ライブラリ・スクーリング」を宣言した我が家の事例を紹介しました。

insects.hateblo.jp

9月に入り、今学期も順調にスタートした……かに思えました。

ところが、しばらくして事態は急転。ある朝「さあ今日も娘と図書館へ出かけよう」という矢先、突然アナフィラキシー・ショック様症状が増悪し、激しい嘔気でトイレに駆け込んだところまでは意識があるのですが、気がつくと「1、2の、3!」で救急隊員に搬送されている自分がいました。幸い、その日のうちに退院できたものの、医師によると「心因性のストレス反応」的な診断。「なにか心当たりがありますか?」と、聞かれましても、自分では何が何だか訳がわかりません。以来、今日に至るまで原因不明の体調不良が不気味に続いています。

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